遊工房について

マリア・ツーリングス

Trans Artists 代表・創始者
(アーティストのための国際アーティスト・イン・レジデンス情報センター) Res Artis 元代表
(滞在型芸術センターの国際機関)

アーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムは地域社会と世界をつなぐ大きな役割を演じてきました。絶え間なく変化しているアート界において、AIRプログラムはアーティスト個々人にさまざまな場所で、一時的でも腰をすえて滞在し活動する特権を与えてきました。

このAIR施設は昨今、アート界の国際化を後押ししています。様々な側面から生まれた豊富な多様性はAIRプログラムがありきたりなものとならないように特徴付けています。現実に唯一AIRが持っている共通点は、芸術のために、アーティストに特定の期間、特定の場所を提供することです。そこでアーティストは異なった背景の元に根を生やすと同時に、そこから一線を画すことが出来るということです。

芸術作品の制作における新しい手法や、AIR施設の大幅な増加はその位置づけを変えてきました。滞在アーティストに対して、他のアーティストとの共同制作や、異なった視点や意見の交流、一般の人々との共同作業の機会を提供しているAIRプログラムが徐々に増えています。芸術作品はもはや個人の実権的創造でなくてもよいのです。創造的な共同作業の過程の中で生み出されたものでもよいわけです。そして、異なった文化、背景、習慣を経験しうるこのような手法は今後広く普及してくるかもしれません。

このようなAIRにおける新しい特徴的な取り組みは東京の遊工房アートスペースによっても行われています。村田夫妻は、アーティストやキュレータ達へ、独創力の発揮と、アートを通じての国際交流の深耕のための革新的な計画立案を呼びかけています。遊工房のようなプログラムは、訪問してきたアーティストと地元との間での、長く続く親密な繋がりをもたらすことにもなります。それぞれのAIRは何らかの形で社会に寄与しています。それ自身生命を持ったものであり、日常の存在であり、現実的なものだから。
(2006年)

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