AIR ほんとの話

アーティスト・イン・レジデンスほんとうの話vol.2

遊工房アートスペース10周年記念
AIRs vol. 2 アーティスト・イン・レジデンスのほんとうのはなし

主催:遊工房アートスペース
助成:平成23年度文化庁文化芸術の海外発信拠点形成事業、EU・ジャパンフェスト日本委員会
協力:Asian Cultural Council、ルクセンブルク大公国大使館

日程
DAY 1: 2011年12月23日(金・祝) 13:00-18:30
DAY 2: 2011年12月24日(土) 16:00-19:00

会場
遊工房アートスペース

DAY 1(一般公開フォーラム)
Part 1 「AIRに参加する」
アーティストが自らのAIR滞在経験を、今後AIRへの参加を考えているアーティストと共有するフォーラム。今回は、小林史子と稲垣立男が参加した海外のAIRを紹介した。小林はHweilan International Artists Workshop(台湾)、KHOJ KOLKATA(インド)、GERTRUDE CONTEMPORARY ART SPACES(オーストラリア)、Stiftung Künstlerdorf Schöppingen(ドイツ)等、海外での滞在制作の経験が豊富だが、日本という活動拠点を維持しながら、海外のAIRや展覧会に参加するというキャリア形成のスタイルを例示した。稲垣はロンドン大学ロイヤルホロウェイ校(英国)、Nordic Artists' Centre in Dale(ノルウェー)、18th Street Arts Center(米国)、国際芸術センター青森、Grizedale Arts(英国)、Compeung(タイ)といったAIRに参加しているが、現地のコミュニティと関わることが制作のプロセスの一部となっているため、キャリアにおいて作品とAIR滞在が強く結びついている事例を紹介した。また、Asian Cultural Councilの吉野律は、アーティストの海外AIR滞在を支援する助成団体の立場から、助成プログラムの内容と目的について説明した。アーティストが海外に一時的な生活・制作拠点を構えることで思考をより深め、社会とのネットワークを築くとともに、次のキャリアステップへのモチベーションにもつながると話した。

Part 2 「アーティスト・ランのAIR」(マイクロレジデンス)
AIRを自ら運営しているアーティストであるシーユン・ヨー(INSTINC、シンガポール)と松崎宏史(Studio Kura、福岡)は、それぞれが関わるAIRを紹介した。同一のアーティストを双方でホストする交流プログラムも開始しており、アーティストが制作環境を整えるうえで、AIRという活動形態を取り込み、アーティストとの交流やネットワーク形成に活用している事例となった。

フォーラムの後には、遊工房アートスペースの施設紹介を兼ねて、AIR滞在中のスティーナ・フィッシュがスタジオを公開して活動の中間報告をした。ギャラリーでは、年明けの個展に向けて作業中の松本恭吾が現場を公開するとともに、2011年に遊工房のネットワークを活用してフィンランドのAIR「Art Break」に滞在した際に撮影したビデオも発表した。

DAY 2(非公開ネットワーク会議)
シンガポール、ベトナム、福岡、東京でマイクロレジデンスに該当するAIRの関係者が集まり、マイクロレジデンスを運営する経験、または各地のマイクロレジデンスをつなぐネットワークを構築する可能性について意見交換を行った。会議には村田達彦・弘子(遊工房アートスペース共同代表)、シーユン・ヨー(INSTINC代表、シンガポール)、松崎宏史(Studio Kura代表、福岡)、そしてSkype経由でリン・フォン・グエン(Nha San Studio代表、ベトナム)が出席した。

はじめに、遊工房アートスペースで行ったマイクロレジデンス調査の概要報告があり、様々なAIRの活動状況に関する情報や、分析から見えてきた特徴を共有することで、ネットワーク形成の可能性の議論へつなげた。(註)

ネットワーク会議前半では、それぞれの参加者が自身のAIRプログラムについて、設立の動機、背景や運営組織の構成を含めて紹介し、各々の立場からマイクロレジデンスの重要性に対して意見を共有した。後半では、ネットワークのメンバーの相互利益と小規模レジデンスの存在の可視化を目指して、マイクロレジデンス・ネットワークの効果的かつ現実的な組織構成について議論した。マイクロレジデンスの重要な役割は、規模の大きなレジデンスに見落とされがちな、若くて経験の浅いアーティストにも実験できるスペースを提供し、アーティストのニーズに柔軟に対応し、長期的な関係性を作ることにあるということが確認された。更に、このような目的で情報、資源、アドバイスを共有し、コラボレーションと文化交流を促進できるようなプラットホームの在り方について、具体的な提案を検討した。

ネットワークの構造については様々な意見が挙がったが、それぞれのメンバーがネットワークの発展に対して責任を持つように分散的なネットワークに合意が見られた。将来的にはホームページの開設も視野に入れて、Facebook、Ustream等のSNSを活用した継続的な意見交換の仕組み作りの提案があった。更に、アーティスト・データベースの作成やキュレーターや評論家とのつながりを共有すること、またコラボレーションとして巡回展やアーティスト交流プログラムを企画する案等が議論された。

このディスカッションにより、マイクロレジデンス・ネットワークの方向性がより明確になった。メンバー同士のコミュニケーションが深まり、遊工房、INSTINC、Studio Kuraのコラボレーションプロジェクトもより具体化した。2012年にはマイクロレジデンスのネットワークの可能性をさらに議論する場の実現を図ることになった。

註:詳しくは、遊工房アートスペース「小さなアートの複合施設から大きな可能性を!―マイクロレジデンスの調査研究(中間報告)―」(2012年6月)を参照。

チラシ

 

 


» ほんとうの話TOPに戻る